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スカーレット

ある日の夕方。二人の学生が公園のベンチに座っている。一人は少年、もう一人は少女だった。はた目から見たら初々しいカップルだった。

『一緒に西高校に受かろうね』

少女が無邪気にそう言う。

「あぁ・・・」

少年は曖昧な返事をする。

「あのな・・・」

『なに?』

少女は目を丸くして言う。そこに疑いのまなざしなど無い。

「・・・やっぱなんでもない」

少年は黙り込んだ。

『・・・あ、この間の模試、カツミのおかげで数学で65点もとれたよ!』

「65点も、って」

カツミと呼ばれた少年は笑いながら言う。

「まだまだじゃん。お前目標はもうちょっと高くしろよ」

『もう、もっと褒めてよ!!私の中ではすごいのに!!いっつも上から目線なんだから・・・』

それを聞いた少年はまじめな顔になって、
「ごめん悪かった。よくがんばったな。えらいぞ、ミヤコ」

『えへ・・・』

ミヤコと呼ばれた少女は照れながら言う。

『カツミに褒められてもなんか違和感』

「なんだそれ」

二人は笑った。

カツミはミヤコと同じ高校に進学するつもりはなかった。自分の能力をより高めるためには、地元の高校ではなく都会の有名私立高校に進学するのが1番だと考えていたからだ。

しかし問題はミヤコだった。ミヤコはカツミが地元にとどまると思っていた。そして一緒に同じ高校に行こうと、苦手な勉強もがんばっているのだ。 そんなまっすぐなミヤコに真実を言い出せずにいた。・・・いつかはばれてしまうのに。 カツミはせっかくがんばっているミヤコのやる気をそぎたくないという思いだった。ミヤコはこのままがんばれば受かると思う。

でも・・・

その努力はミヤコ自身のためではなく、自分と一緒にいたいがためだというのもわかっていた。

「なぁ・・・」

『何?・・・最近のカツミ変だよ』

変だ、と言いながらもその丸い瞳には疑惑などない、ただただ、カツミを心配する思いだけである。

「そうかな?」

『なんでも言って!隠し事はなしっていったでしょ!』

「・・・」

『最近カツミがわかんなくなる・・・』

「え・・・」

『私に嘘つかないで・・・』

「・・・ホントのこと言っても」

『え?』

「ホントのこと言っても、笑って許してくれる?」

『な、何?なんでも言って!』

「実はな・・・」

カツミはついに打ち明けようとした。しかし・・・

「あぁやっぱり言えねえ・・・」

二人はしばらく黙りこんだ。

『・・・手紙』

少女が沈黙を破った。

「え?」

『手紙でなら書ける?』

「手紙・・・」

『口では言えないことでも手紙なら書けることってあると思うの』

「・・・」

『とにかく!手紙、書いてね!明日までに書いてよ!絶対ね!』

「・・・わかった」

『うん!じゃ、そろそろ帰ろ』

「ああ」

二人はいつものように手をつないで帰った。ミヤコは上機嫌でニコニコしている。カツミの大好きな笑顔で。しかしカツミはある思いでいっぱいだった。――。

――もしホントのことを書いた手紙を読んでも
君はそれでもその微笑みを絶やさないでくれるかなぁ――

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2014年8月の管理人ぼやき

氷室京介さんのラストライブまでに、航空各社が精神障がい者割引を始めてくれることを切に願う今日このごろです。

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